#2辻愛沙子が考える令和時代のクリエイティビティとは?”令和時代のクリエイティブ人材”
「令和時代のクリエイティブ人材」
#2 辻愛沙子が考える令和時代のクリエイティビティでは
世界的にも社会性って文脈がますます重要になって来ています。
#1では辻さんが手がけた広告を元に説明しましたが、今回は世界です。
世界の広告は本当にすごくてその痺れる広告を元に令和時代に必要な「社会性」
についてもっと理解度を深めて行きましょう。
#1 辻愛沙子が感じだジェンダーギャップでは
実際に辻さんが仕事をして感じた違和感と、自身が手がけた広告を元に広告のあり方について話しました。
#3 令和時代のクリエイター生存戦略
令和時代に必要な社会性については#1と#2で話しているので#3では実践的な「企画力」「クリエイターの仕事の仕方」あなたが今からでも始められる事について話しています。
アクティビスト/ジャーナリズムの越境
令和時代のクリエイティビティについてあらためて考えたいと思うんですが
これからの時代の広告は『社会性×クリエイティビティ』がますます重要になってくると思います。
なぜ、この「社会性×クリエイティビティ」が今の時代に必要なのかを紐解いていくと
今まで、「記者」、「ジャーナリスト」、「活動家」がやっていたアクティビストやジャーナリズムに関して、近年かなり越境してきていると思っています。
ジャーナリズムって簡単に言うと社会で起きていることをどう切り取るかってことなんですが
例えば
女子プロサッカー選手のミーガン・ラピノーさんは男女の待遇格差解消に挑んでいたり、左上の竜崎翔子さんは本業はホテルの経営者なんですが新型コロナに対しての服を作ったりしています。
左下のお二人なんかはサスティナブルを主にやっているインフルエンサーなんですけど、ぷるこちゃんはもともとYouTubeをやっていてアパレルブランドを立ち上げたんです。でも物を作っている中で大量生産大量消費の現実を目の当たりにして、「ゴミを作っている気分になった」と言っていて今サスティナブルブランドにリブランドしようとしていたり。
もちろんプロのジャーナリストとかと比べるとやってる事は違うんですけどジャーナリズムってことで言うとフィールドが何か越境しているしているなと思っていて、何か特殊なことではなくなって来ていると感じています。
「広告もこうなって行っていくべきだよね」って話はよく恩師の牧野さんと話しているんです。
広告はブランドジャーナリズムへ。
広告もブランドジャーナリズムを持つべきだと思っています。
広告の世界で言うと「クリエイティビティ」×「社会性」の事をブランドジャーナリズムと言っていて
「ブランドジャーナリズムとは」
1. ブランドの意思を明確にし
2. 社会へのメッセージを伝えるアクションをおこし
3. 賛同する人たちを強いファンにするコミュニケーションのあり方のことで
例えば、社会性っぽい広告ってすごい増えていると思うんですけど炎上するものもあれば跳ねないものもあると思うんですが原因はこの3つだと思っています。
なんでそのブランドがやるんだっけってところが見えないと胡散臭くなるんですよ。
それがブランドのアイデンティティーで、例えば
新型コロナで今「就活とか企業の採用で困ってるって、今がまさにその状況だと思うんですが上記の3つの文脈でビデオマッチングさんがやるってことはこの3つの文脈に則っている」るんです。
でも、いわゆる炎上してるジェンダー広告って「そもそもジェンダーのことわかってます?」っていう事とか、そうゆうのじゃなくても、「そもそも、なんであなたがそう言ってるんだっけ?」っていうその薄っぺらさが、炎上に繋がったりとか胡散臭さがある広告って思われる原因だと思ってます。
なので、広告でとても重要なのは
『ブランドのアイデンティティーをしっかり掴んでいるか』と、その『ブランドがどういう意思/メッセージを未来に対して伝えて行きたのか』、『社会の潮流ってどうなっているんだっけっていう』3つのバランスがすごく大切でそんなことを私が考え始めたキッカケは
この少女に出会ってから…
一人の少女に人生を変えられた私
Fearless Girl
私はこの少女に出会って変わりました。
フェアレスガール(恐れを知らぬ少女)と言う広告で
世界最大級の広告の祭典『カンヌライオンズ』でグランプリを総なめした企画です。
この広告はアメリカのウォール街に登場した銅像で、『1人の女の子の銅像を置いただけのシンプルな企画』なんですが…
この少女の奥にいるこのブルーの銅像って金融界の象徴とされていて。パワーと権力の象徴とされているブルーの前にちっちゃい少女の銅像(フェアレスガール)を置いたんです。
金融界は物凄いジェンダーギャップがある世界で女性の役職がついてる人が少ないし、そもそも女性の比率が少ないって社会問題に警鐘鳴らした企画で
金融会社がやっているんですけど、この企画はいろんなところから評価されてて、これの何が凄いかって言うとキャンペーン開始後12週間の間にTwitterのタイムラインで46億回出て、Instagramでは7億回も写真が出ているんです。
この企画がバズった理由の1つに
ニームっていう言葉があるんですけど、コラ画像みたいなフォーマットになってる元の写真に、みんなが付け加えてバズっていく流れのことでこの構造がうまく出来ていて、みんなこの銅像の横に立って同じポーズして写真撮るんですよ。
シンプルなんですけどこの女の子の横に立って撮るってだけで、同じポーズを撮って写真を載せるだけでこのムーブメントに参加しているって座組みができていることがバズった秘訣なんです。
その他にもこの広告なんかも本当にすごくて
Believe in something.Even if it
means sacrificing everything
Just do it
このNikeの広告はすごい痺れるんですけど
アメリカではアメフトの試合の際に膝をついて国家斉唱をするんですけど、この選手はそのタイミングで膝をつかなかった選手なんです。
なんで膝をつかなかったのかっていうと『黒人や有色人種への差別がまかり通る国に敬意は払えない』って理由で国家斉唱しなかったんです。
NFLってリーグを追放されたされたんですけど、追放された後にNIKEがこの選手をキャスティングしてこういう広告を出したんです。
そのメッセージがカッコ良くて。
『信じろ。たとえそれで全てが犠牲になったとしても。』
ってキャッチコピーを載せたんですね。それでJust do itですよ。これ本当にカッコ良くて
もちろんキャスティングした時は当然非国民とか言われたり物凄いバッシングされた選手だったんですよ。
でも、その彼を起用するっていうところのさっきの3つで言うところの
ブランドがどういう意思をブランドが表明したいかって言う意思証明をしたわけですよ
みんなに好かれたいっていうより俺たちはこれを大事にしているっていう意思表明として彼をキャスティングしたんです。はじめはかなり炎上をしましたけど最終的にこの広告が話題になったこともありますし、その強いメッセージに共感した人が応援するって意味で商品を買ったりして売り上げも株価も過去史上最高を記録した広告って言われてるくらいすごい広告なんです。
The Tampon book
もう一個事例を紹介すると「tampon book」(タンポンブック)です。
これは日本もそうなんですけど生理用品って世界的に見ても税率が高いんです。
日本も増税のタイミングで10%になったんです。
ドイツが増税のタイミングの際に行った企画なんですけど
増税の際に「トイレットペーパー」とか「食べ物」、「本」とかの生活必需品は増税されずに7%で変わらなかったんですけど、女性の生活必需品の生理用品は19%に増税されたんです。
そのタイミングで、この差っておかしくないですか?ってことで動いた企画で
実際いろんな国で生理用品の消費税って問題になってるんです。
それに対してドイツはムック本の構造を使って実際に本屋でタンポンを7%で売ったんです。
これ自体、『本屋さんで買って7%で買えるようにしましょう』って永続的な話にはなってないんですけど、この企画はすごい面白いんです。一応「本」っていう程際を作るために何ページかのぺらぺらの本がついてたりしていてこの税率で売られたんです。
これ結構話題になって19%の税率をかけられてることに知らない人がたくさんいた中で記事とかがたくさん出てきたと、社会活動に直結した企画なんですよ。
これからの時代の広告のあり方
広告って売り上げに直結する、KPIに直結する。っていうところで言うと「宿命」だったりします。
なんですが、
一個の指標としてブランディングってすごく大切で、さっきのNikeの話だったり。こういった社会文脈に対しての意思表明が必要になってくるんです。
もちろんリスクもあって意思表明するってことなので企業にまず意思が必要ってこともありますし、日本の特に大企業とか経営者の課題なのかもしれないです。
とはいえ『社会課題やりたいけど売り上げに直結するの?』ってうところで相談されることがあります。
もちろん消費者側の意識改革も必要だと思うので一概に「社会課題の広告をやったほうがいい!」とは言えないんですけど、日本も少しずつそういった社会課題に対する行動を起こすって言う流れが来ているので、あと数年で結構変わると思います。
そういった社会的な広告(Fearless Girl ,Nike,Tanpn bookなど)を総じて「ブランドパーパス」とか「パーパスドリブン」とか、「パーパスブランディング」とかいわれてて、企業は何のためにやるのか、パーパスを大事にしよう!って意識が世界で見るとスタンダードになってきています。
私たちはパーパスを大事にしよう!ってことを、「ジャーナリズム性」 ブランドジャーナリズムって言っているんですが、そもそも広告って社会に対して何を思ってるか、どういう意味を持つのかというところが大前提だよねって事には既にグローバルスタンダードになっています。
ブランドジャーナリズムが大切だ!と言っていても
もちろん広告なので企業の利益に繋がるコミュニケーションでなければいけないってところは大前提だとは思うんです。なんですけど、それって利益と倫理って相反するものでは必ずしもないので、その2つが合致するものを作るのが広告クリエイターの役目であるって考え方です。
日本でこういう事例としては、師匠の牧野さんが手がけた企画で、クレヨンしんちゃんをキャスティングしたオイシックスさんの広告です。
「かあちゃんの夏休みはいつなんだろう」って広告で、Oisixさんが出しました。
キャッチコピーでわかると思うんですが、お母さんたちの休みが無いって社会文脈に対しての広告で
お母さんって年中無休なんです。子供達はワーイ夏休みだーってなるし、社会人も有給とか取れると思うんですけどお母さんって、子供が休みの時の方が逆に忙しくなったりする。
Twitterとか見てるとやっぱりリアルにそういう悲痛の叫びが上がっていたりするんです。
ちょうど母の日とパパの日に感謝広告を出していたので、子供のコピーとしてこういったものを出したんです。
この広告は春日部駅でだけだったんですけど「しんちゃんのポスター泣きそうになった」ってツイートをして下さって拡散されてTwitterのトレンドに上がってきたり、Yahoo!トップになったりしました。
こういった世の中で意外となかったことにされているモヤモヤとか
「そういうもんだよね」って流されてしまっている痛みってたくさんあるんです。
そういったものを可視化できるのが広告や企業の力。
物事によってで良いんです、全部が全部こうした方がいいって訳では無いですし、広告が生み出してきた常識ってたくさんあると思うのでクリエイターの重みをあらためて感じている次第です。
最後に
今の社会の流れとか、どんな社会課題起こっているのかとか、その課題に対して広告クリエイターは何ができるのかをしっかり考えていかないとなってすごい思っています。 特に今ちょっとコロナでこれからまた社会の社会の流れが変わってくると思うんですけど
これからの時代のクリエイターは前提として社会文脈を読めること、かつ専門性を持つことが求められます。これから活躍するには専門性の越境が必要になってくる時代に、広告クリエイターになる前のあなたは何をすれば良いのかをお伝え出来たらと思います。 |